蒼風閑語

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砂時計の七不思議

田口善弘氏1995年の著作『砂時計の七不思議』(中公新書)を再読しました。

面白くて読み応えがあって本当に大好きな一冊で、理工系中公新書の中では未だにベスト1ではないかと思っている位なのです。

従って「再読」といっても実際にはもう何度目になるのか判然としない程なのですが、改めて通読してみてもやはり圧倒的な面白さでした。

全体は大きく6つの章から成っており、内訳は第一章「流れ落ちる」、第二章「吹き飛ばされる」、第三章「かき混ぜられる」、第四章「吹き上げられる」、第五章「ゆすられる」、そして第六章「粉粒体とは何か」という流れ。

この内第一章から第五章までがいわゆる「本論」に当たり、“砂時計の中の砂” に代表される「粉粒体」の性質を、たくさんの実例を挙げながらある時は物理学的に、またある時はやや工学的に解き明かして行きます。

粉粒体のふるまいは基本的に流体力学の手法で定式化出来るのですが、一般的な流体と異なる最も特徴的な点の一つは、相変化のフレキシブルなところでしょうか。

例えば「雪の結晶」という粉粒体の集まった雪塊が春先に雪崩を起こす時、それまでは固体然として斜面にへばり付いて見えていたものが突然それこそ「水の様に」流れ落ち、行き着くところまで行き着いてしまえばその瞬間に再び元通りに固まってしまう・・・。

そしてこういった粉粒体のふるまいを解析する際に大きな力を発揮するのが数値計算という手法で・・・と何だか内容について書き始めると止まらなくなってしまいそうですけれども、まぁその位面白いと。

どこを取っても読み返すたびに新しい発見があるのですが、特に最後に置かれた総括編としての第六章「粉粒体とは何か」は含蓄あるコトバがテンコ盛で、「科学的なものの見方・考え方」に大きな示唆を与える内容となっています。

残念な事に本書は目下出版社品切れ中。もし興味を持たれた方がいらっしゃいましたら古書店か図書館で探してみて下さいませ。

砂時計の七不思議―粉粒体の動力学 (中公新書)

砂時計の七不思議―粉粒体の動力学 (中公新書)