代数学の名著
半年程前に古書店で旧版を見つけて購入しておいた松坂和夫氏の『代数系入門』(岩波書店)をようやく読了しました。
以前読んだ氏の『集合・位相入門』同様、端正な日本語で述べられる丁寧且つ丹念でしかも広がりを感じさせる解説は、高木貞治氏が『解析概論』の緒言で語った「講義式の叙述」に他ならないものだと感じます。
教本式は既成数学を型に入れて、それを一つの現存物として、言わば一つの閉集合として取扱う嫌があるが、講義式では境界は開放的で、数学を活き物として、その生長の一つのフェイズを捕えようとするところに若干の新鮮味があり得るであろう。
(『解析概論 改訂第三版』〔岩波書店〕より抜粋)
リリアン・リーバー氏の『ガロアと群論』(みすず書房)、志賀浩二氏の『群論への30講』(朝倉書店)、遠山啓氏の『代数的構造』(日本評論社)に続くものとして松坂氏の著作を選んだのはとても良い選択だった様な気がしています。
暫く冷却期間を置いてから折りを見て、次はいよいよ高木氏の『代数学講義』(共立出版)に取り掛かろうかと考えているところです。