蒼風閑語

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マイルスの夏、1969

ジャズやロックを中心とした音楽評論家として知られる中山康樹氏が2月に上梓なさった近刊、『マイルスの夏、1969』(扶桑社新書)を読了しました。

散歩の途中気まぐれに立ち寄った某新古書のチェーン店で、手ブラで出るのも何だから・・・と棚をあれこれ物色していて見つけた一冊。

中山氏の著作については、彼のライフ・ワークともいえる『マイルスを聴け!』(双葉社文庫)を旧ハードカバー版の頃から愛読しているせいもあって、新刊を見つけるとつい手に取ってしまいます。

本書で試みられているのは、マイルス・デイヴィスの長いキャリアの中でも一つのピークと言えるであろう1969年、つまり "In a Silent Way""Bitches Brew" という怒涛の2作品が録音された年に照準を合わせた解説。

さすが日本におけるマイルス研究の泰斗(たいと)による筆だけあって、その記述は余人を寄せ付けない詳細にして愛情溢れるもの。

本書を読むと、名作というのは1人の天才的なアーティストだけの力で作られるのではなく、アルバム製作に関わった全てのミュージシャンやプロデューサーなどが万全の仕事をして初めて出来上がるのものなのだ・・・という事がよく判ります。

歴史的名盤が作られて行くプロセスを、まるで良く出来たドキュメント番組でも見る様に追体験させて貰える、読み応え充分にして得難い一冊でした。

マイルスの夏、1969 (扶桑社新書)

マイルスの夏、1969 (扶桑社新書)