蒼風閑語

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新訂・英文解釈考

佐々木高政氏1980年の著作、『新訂・英文解釈考』(金子書房)を読了しました。

本書を購入したのはもう随分と前の事になるのですけれども、大判サイズの装丁に英文と訳文がギッシリと詰まった佇まいに気圧(けお)されて、長らく「積ん読」状態にしていたのです。

昨年6月に伊藤和夫氏の『英語長文読解教室』(研究社)を読み終えてからあまり間を置かずに取り掛かったのですが、気が付けば読了までに凡そ半年近くを費やしていました。

読中に感じていた本書のイメージを一言で表現するならば、クォリティの高い例文を最小限の説明でもってとにかく沢山訳してみましょうという「千本ノック風コンセプト」・・・となるでしょうか。

徹底的に無駄を省いたスマートかつ的確なコメントと、英英辞典から抜粋された語釈例が訳文の前に添えられているのですが、なかなかこれだけではストンと“腑に落ちる”という感じにはなりません。

いきおい手持ちの辞書で他の単語等も当たってみる事になるので、結果的には大部の洋書を読み上げるのと同じ位の時間を要することになりました。

それにしても語彙といい構文といい、予め相応の読解力を身に付けておかないと容易には読みこなせない難易度で、イマドキの易しく書かれた参考書とは明らかに一線を画する内容だったと思います。

英文を音読し訳文を読み下し、辞書を当たって自分で再度訳を構成し直してみて、その後に改めてコメントを読み返してみると、ようやく「なるほど!」と膝を打つ事が出来る・・・。

単なる「英文解釈」のレベルから「翻訳」のレベルへと半歩ばかり足を踏み入れた様な気分にさせて貰える、本当の意味で“教育的・啓蒙的”なテキストではないかと感じ入っているところです。

新訂・英文解釈考

新訂・英文解釈考