蒼風閑語

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桜が創った「日本」

佐藤俊樹氏2005年の著作『桜が創った「日本」― ソメイヨシノ 起源への旅』(岩波新書)を読了しました。

実を言うと買い求めたのは昨年のことになるのですが、やはりこういったものは時節柄に合わせて読みたいもの。

一週間ほど前からナイト・キャップ代わりに布団の中で読み継いで、ちょうど上手い具合に昨晩読み終えることが出来ました。

・・・というのも、明日の東京地方は再び強い雨風が予想されており、残念ながらこれが「花散らしの雨」となってしまうのはどうやら避けられそうもないところ。読了のタイミングとしてはまさにタイムリーといえそうです。

さて、本書は桜(特にソメイヨシノ)にスポットを当ててその歴史的・文化的・生物学的な本質に迫ることを試みた“桜研究序説”といった風情の一冊でした。

桜について様々な角度から文字通り“語り尽くした”感のあるテキストで、比較的読み易い文体ながら内容は結構濃密なもの。一般向けの新書ながら読み応えは充分です。

特に終盤、ソメイヨシノの全国に及ぶ席巻ぶりを「進化」「順応」「淘汰」といったやや生物学的な視点から述べているくだりは秀逸で、読んでいてゾクリとする様な“知的スリリングさ”がありました。

巻末に置かれた「桜のがいどぶっく・がいど」なる文献リストも新旧硬軟取り混ぜて充実しており、本書の入門書としての価値を更に高めているのではないかと思います。

桜が創った「日本」―ソメイヨシノ 起源への旅 (岩波新書)

桜が創った「日本」―ソメイヨシノ 起源への旅 (岩波新書)