蒼風閑語

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解析入門

しばらく前にネット古書店で見つけて買い求めておいた“岩波基礎数学選書”の中の一冊で、小平邦彦氏の代表作としても知られている『解析入門』(岩波書店)を読了しました。

50ページ以上に渡る丁寧な「実数」の解説から始まって、第2章における各種「関数」の定義までで100ページ近くを費やすというある種贅沢とも言える懇切さは、最後の章まで一貫した“本書ならでは”ともいえるスタイルでした。

取り上げられているトピックは解析学の入門書としては実にオーソドックスなものですが、解説が念入りなうえ所々にある図版の挿入が非常に巧みなせいか、何となく“知っているつもり”だった事柄についても改めて「そういう事か!」と気付かされる所がたくさん。

この読んでいて「!」となる感じは、なかなかコトバでは上手く表現しにくいのですけれども、巻頭に置かれた「まえがき」の中で小平氏はこんな風に語っています。

 “私の見る所では、数学は、物理学が物理的現象を記述しているのと同様な意味で、実在する数学的現象を記述しているのであって、数学を理解するにはその数学的現象の感覚的なイメージを明確に把握することが大切である。”

まさにこの言を書中で実践し尽くした感のある、細部に至るまで本当に配慮の行き届いた一冊であったと思います。

軽装版 解析入門〈1〉

軽装版 解析入門〈1〉

 
軽装版 解析入門〈2〉

軽装版 解析入門〈2〉