物理学の視点
“この一冊に集中して”という感じではなく各編・各章をぽろぽろと拾い読みをしていた、江沢洋氏の『物理学の視点 力学・確率・量子』(培風館)を読了しました。
サイズがB6判と小ぶりな上、厚みも250ページ程というコンパクトなナリをしているので、すぐに読み終えるだろうと思っていたら全然そんなことはなくて、立ち止まってあれこれ考えたり紙と鉛筆を用意して手を動かしてみたくなったりする様な面白いトピックが満載されていました。
サブタイトルにある通り全体は3つのパートから構成されており、まず第Ⅰ編が“高校物理に微積分の思想を”、続く第Ⅱ編は“確率も物理はつかう”、そして最後の第Ⅲ編が“ひとつの量子力学入門”という流れ。
第Ⅰ編には微積分と微分方程式の「ココロ」の様なものがとても丁寧に解説されていて、ここから同氏の『力学―高校生・大学生のために』(日本評論社)や『解析力学』(培風館)などに進んで行けば、力学的世界の全体像をとても見通し良く体験出来るのではないかと思いました。
また続く第Ⅱ編は、現在四苦八苦しながら取り組んでいる“岩波講座現代物理学の基礎”第6巻『統計物理学』とちょうど内容的にもピッタリとリンクしていたので、今もサブテキストとしてやたらと重宝しています。
第Ⅲ編は量子力学への手ほどきを、子供向けの本にあった“コップの同じ場所を叩けば同じ音がする”という固有振動についての記述から始めて行く構成が巧みで、あっという間に量子の世界に引き込まれてしまいました。
尚、巻末には第Ⅳ編として江沢氏と倉田令二郎氏による“物理と数学の交流”と題された対談も収録されており、上記3編を総括する意味合いもあってこちらも興味深い内容となっています。
ここは折角なので余勢を駆って引き続き、『続・物理学の視点 時空・量子飛躍・ゲージ場』(培風館)の方にも取り組んでみたいと思います。